天幕ほしぞら

テントに泊まる登山とロングトレイルの旅

憧れの『信越トレイル』をスルーハイク!テントを背負ってブナの森を歩く4泊5日の旅(後編)

霧のテントサイト

 

 

前回の記事に引き続き、『信越トレイル』で撮ってきた写真を公開しています。

記事の後半には、簡単に今回の旅程とアクセスについてまとめました。

 

 

ハイカーの日記

朝起きて、袋ラーメンと魚肉ソーセージの朝食をとる。北アルプスのときの同じメニューなので、さすがに飽きてきた。朝はほとんどゆっくりする時間はない。テントを畳み、靴紐を締め直して歩き出す。

 

林道からブナの森に入ると、「ふかふか」の道になる。

トレイルはよく草刈りがなされていたが、夏のせいか日の当たる場所はオオバコで覆われていて踏み跡が見えなくなっていた。しかし、所々に信越トレイルのマークがあるので迷うことはない。

「今日も誰とも会いそうもないな」と感じるような道だ。そして、この先を曲がると熊がいそうな気配は常にあるのだから困ったものだ。「クマさんに、出会った~」と歌ったり、口笛を吹いたりしながら歩く。

 

昼間はハチの羽音がうるさかった。うだる暑さで、汗が顔を滴り落ちる。暑さをやわらげたくてゴクゴクと水を飲むけれど、さらに多くの汗が吹き出るだけだった。

午前中は晴れていても、14時を過ぎる頃になると霧に包まれた。夕方前にテントサイトに到着する頃にはヒグラシが鳴く。

 

霧の光ヶ原キャンプ場

 

『信越トレイルクラブ事務局』が管理するテントサイトの水は濾過か煮沸が必要なので注意したい。僕は浄水器を持参した。

光ヶ原キャンプ場には宿泊施設がある。ここでは、シャワーを利用できる(200円)。シャワーを浴びた後は、再び臭い服を着る……。でも、シャワーはものすごくさっぱりする。さっぱりするとやる気が出る。これは結構大事。

 

夕日に染まる湖とブナ林を眺めながら食べる牛丼(レトルト)は最高だった。一人の寂しさはあるけれど。

しかし、至福の時間は長くは続かない。大量の蚊(ブヨ?)が出てきて、小走りでテントに退却。寝っ転がって陽が沈むまで日記を書く。

 

ある日は「トレイルマジック」に遭遇した。

日本にもハイカーを支えてくれるトレイルエンジェルがいることに感激した。

 

ハイクする自分

とうとう「ハイカー神」が乗り移った私(笑)

テントを組み立てる自分

暇な日のオッサンは自撮りが上手くなる

テントサイトと自分

テントを組み立てる自分

信越トレイルを歩く自分

ブナと自分

ゴール!

 

『信越トレイル』を歩いて

一本のトレイルを5日間かけて歩いた。 

朝起きて簡単な食事をとったら、テントを畳んでいつものように歩き出す。暑さで吹き出る汗をぬぐい、顔にまとわりつく虫を払いながら、目の前の道をひたすら歩く。夕日が傾いてくる時間にテントサイトに到着し、平な場所を見つけてテントを張る。日が暮れる前までは食事をとったり、日記を書いて自由に過ごす。

 

そのシンプルな長い時間のなかでほとんど人と出会わなかったことは、人見知りをする僕でも寂しさを感じるぐらいだったが、そのおかげで信越の優しい自然を感じる旅ができた。

 

その印象を一言で表すとするなら、信越トレイルは“里山のトレイル”。

現代の里山はどこに行っても杉の植林ばかりだけど、ここには「昔と変わらない自然」が残っているように感じた。

♪兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川…。

起点の斑尾山は、唱歌『ふるさと』に唄われたあの「かの山」だそうだ。

ブナが美しい春か秋に、また、ふるさとの山を歩いてみたい。

 

蝶

モリアオガエル

モリアオガエル

オニヤンマ

オニヤンマ

信越トレイルのモリアオガエル

モリアオガエル

セミの抜け殻

信越トレイルのホオノキ

ブナの巨木

信越トレイルとブナ

霧のブナの森

 

『信越トレイル』の旅程とアクセスについて

旅のプランは、信越トレイルクラブの事務局のサイトをじっくりと読んで立てた。歩く際のルールや通行止め等の情報、テントサイトや水場などの必要な情報が得られる。

車はチロル前登山口に停めた。帰りは森野宮駅から電車とバスを乗り継いで戻ってくる。登山口に車を停める場合は、必ず事前に事務局に連絡すること。

 

 

信越トレイルオフィシャルサイト http://www.s-trail.net/

 

 

Day1 斑尾スキー場~赤池テントサイト

Day2 赤池テントサイト~桂池テントサイト

Day3 桂池テントサイト~光が原キャンプ場

Day4 光が原キャンプ場~野々池テントサイト

Day5 野々池テントサイト~天水山~森野宮駅

(2019年8月2~6日)

 

関連する記事

ロングトレイルを歩く際の「持ち物」についてはこちらが参考になります。 

 

信越トレイルの「前編」はこちらです。 

憧れの『信越トレイル』をスルーハイク!テントを背負ってブナの森を歩く4泊5日の旅(前編)

トレイルとトレッキングポール

 

 

約3週間の「大人の夏休み」も中盤。

北アルプスの『裏銀座&表銀座』を4泊5日で縦走したあとは、その夜に白馬へと移動しました。翌日は半日休んで疲れを取り、夕方に斑尾へと移動。

そしてその翌日、『信越トレイル』を歩き始めました。

 

 

憧れのロングトレイル

日本は世界でも有数の豪雪国である。

積雪が多いにも関わらず、人口が多い地域というのは類をみないそうだ。実は、国土の約50%が豪雪地帯に指定されているというから驚きである。

 

豪雪地帯と知られた地域は日本各地にあるが、そのひとつに秋山郷がある。秋山郷は長野県栄村と新潟県津南町にまたがる地域のことだ。栄村の森宮野原駅に行くと、「日本最高積雪地点」の標柱が建っているが、昭和20年には「駅における最高積雪量7m85cm」を記録したというから、想像を越えるような雪が降る土地なのだということがうかがい知れる。

 

今回はその豪雪地帯を5日間かけて歩いてきた。

 

そのコースを簡単に説明すると、前述の森宮野原駅から北方向に見える「天水山」が起点になる。天水山は標高1088mとそれほど高くはない山だけれど、そこには豪雪に耐えてねじまがりつつもたくましく育つブナの木々を見ることができる。

そこから、南へ80km。開田山脈の稜線を辿っていくと、もう片方の起点「斑尾山」がある。斑尾山は、スキーが好きな人には馴染みのある山かもしれない。

 

今回はそのルートを南から北へ、斑尾山から天水山まで歩いた。

 

そのトレイルは『信越トレイル』と言って、ハイカーにはよく知られたロングトレイルだ。僕にとっても、長年憧れてきた道でもある。

それは日本を代表するロングトレイルと言われているからでもあるけど、バックパッカーの先輩である故・加藤則芳氏が構想に関わった道だということが大きかった。

 

信越トレイルの案内板

 

ロングトレイルとは

ロングトレイルというと、大自然のなかを歩く旅を想像するけど、いわゆる登山道やハイキングコースを歩くのとは少し趣きが違う。

農道、林道、ゲレンデ、アスファルトで舗装された道……いろんな道を歩く。以前歩いた『六甲全山縦走路』や『生駒縦走歩道』では、住宅街やゴルフコース、墓地の中なんかも通った。僕はそんな変化のある道が好きだ。

 

ロングトレイルとは、「歩く旅」を楽しむために造られた道のこと(※)

 

その地域独自のコンセプトでアレンジされているから、ロングトレイルとはこんなところだと一概には言えないが、「その土地の自然や文化、歴史に触れる(※)」ことを目的にしているようだ。

 

信越トレイル

信越トレイルの農道

信越トレイルの木道

信越トレイルの農道

信越トレイルと蜘蛛の巣

トレイルシューズ

 

 

夏の信越トレイルとスルーハイカー

僕が信越トレイルを歩いたのは、お盆前の夏真っ盛りの時期。

「信越」という涼しげな名前から、「木陰のハイキングで涼めるな~」と楽しみにしていたが、その期待は見事に外れた。

信越トレイルは、長野と新潟の県境に位置する開田山脈のほぼ尾根上に延びるトレイルなのだが、意外と標高が低い(1000m前後)。その気温は平地とあまり変わらないのだ。

だから、とにかく暑かった。

そして、虫が多い。

至る所を刺されて、体中が「かゆい」ったらありゃしない。

 

信越トレイルが、「暑い」「かゆい」里山のトレイルだったとなると夏に行く人がいなくなってしまう恐れがあるのであまりネガティブなことは書けないが、さらに言えば、その5日間の旅で「誰一人とも会わなかった」笑

本当は、散歩風のご夫婦とボーイスカウト風の一団とすれ違ったし、途中の池には釣り師がいっぱいいたので嘘なのだけど、トレイル上でスルーハイカーとの出会いが最後までなかったのは残念なことだった。

(加藤氏の『ジョン・ミューア・トレイルを行く』には、本場のハイカー達の出会いが描かれていたから期待していたのだ。)

 

人気のないトレイルに寂しさを感じた反面、自然を感じながら歩けたことはとても良かった。信越トレイルの一番の魅力は、全線を通じて美しいブナ林を歩くことができること。神秘的な風景に、ただ独り浸ることができた。

 

信越トレイルとブナ

信越トレイルと池

霧の信越トレイル

霧の信越トレイル

霧のブナの森

信越トレイルとブナ

信越トレイルとブナ

霧のブナの森

信越トレイルとブナ

信越トレイルからの眺望

 

「後編」へ続く……

  

(2019年8月2~6日)

 ※出典『知識ゼロからのロングトレイル入門』

 

 『信越トレイル』の「後編」はこちらから読めます

北アルプスの装備・持ち物まとめ『裏銀座&表銀座4泊5日テント泊縦走』

表銀座とハイカー

表銀座を行くハイカー(左上)

 

最終日は、大天荘から『表銀座』縦走路を北上しました。

表銀座は人気のルートだけあって、燕岳に近づくにつれて、ハイカーが増えていきました。一昨日までは霧に包まれて眺望がなかったのが嘘のように、空は晴れ渡り、遠く槍ヶ岳まで見通せました。

燕山荘からは、『北アルプス三大急登』のひとつ『合戦尾根』の長い下りを駆け、下界へ……。

穂高駅でバスから下りると、焼けた肌に直射日光が当たってめちゃくちゃ痛い。駅舎に逃げ込みました。

 

こうして、僕の初めての北アルプスの旅が終わりました。

今回は『裏銀座表銀座縦走』の装備・持ち物についてまとめたいと思います。

 

 

北アルプスに適した靴とは?

ハイカー

 

今回の持ち物で一番迷ったのが靴だった。

僕は近所の山を登るときはトレランシューズを履いているけれど、「北アルプスを歩くなら登山靴が必要」と言われるからだ。それはもう「常識」みたいなものだ。雑誌を読むとそのように書いてあるし、ショップでも必ず勧められる。「岩からの突き上げが痛いし疲れるから硬いソールが最適です」というおなじみのフレーズは、僕がアウトドアを始めた20年以上前から聞いているから、たぶん本当なのだろう。

 

一応、ショップで登山靴を物色してみたけど、今回はトレランシューズで行くことにした。その結論をいうと、まったく問題なかった。

 確かに、登山道はゴロゴロとした石の道だった。ガレ場、岩稜帯も連続する。いつもの低山の登山道よりも、石や岩のとんがりを感じながら歩く感じだ。そのような登山道では石の突き上げを和らげたいので、硬いソールの靴は重宝されるのかもしれない。

 

でも、どうしても登山靴が必要だとは感じるほどではない。むしろ、重い登山靴にはない軽いシューズのメリットに目が向く。

トレランシューズの良いところは軽くて疲れにくく、足さばきがしやすくて、足裏感覚に優れるところ。ひとことで言えば、身軽だ。その結果、足を正確に置けるし、早く歩けるし、疲れにくい。

唯一気になった点は、石が多くなったので足首をひねりやすかったこと。もしハイカットであれば、軽く痛めてしまった足首を保護できたかもしれない。 

北アルプスの登山道では、トレランシューズで歩く人を度々見かけた。

 

テントの選び方

槍ヶ岳山荘のテント場

 

旅前に不安だったことのもう一つはテントとテント場だ。

山のテント場は下界のキャンプ場と違って風がめちゃくちゃ強そうだし、それに耐えられるテントを使用しなければいけないんじゃないかと思っていた。

 

僕が使っている一人用のテントは、ビッグアグネスのフライクリークUL1EX。

このテントはY字型のフレーム構造で、半自立式と言えるモデル。一本しかフレームがないから、手で持って左右に揺らすと簡単に揺れるので、防風性に不安を持っていた。

一方、山岳で実績があるのは、クロスフレーム構造のテントだろう。

 

実際に使用してみた結果は、こちらも問題なかった。ただし、今回はフライシートがバタバタというぐらいの風が吹いていたけど、台風みたいな強風下で耐えられるのかというとわからない。

ちなみに、フライクリークは一度も見なくて、クロスフレームの使用率は多かった。

 

裏銀座表銀座の住と食

山小屋

双六小屋

双六小屋

 

「布団2枚で5人」というフレーズを、何度か耳にした。もし私が小屋泊まりを選択していたら、着替えを持ってきていない私と同じ布団に寝る人はかなり気の毒なシステムだ(笑)料金は6000円(素泊まり)ぐらい。

小屋泊まりは、一度だけ経験があるけれど、そのときに隣の人とくっついて寝られずに苦しい思いをした。そのときは寝袋だった。やっぱり僕は、永遠にテント派かもしれない。

 

テント場

燕山荘のテント場

燕山荘のテント場

 

 

今回は4つのテント場に泊まった。

烏帽子小屋、三俣山荘、槍ヶ岳山荘、大天荘。

どのテント場も良かったけど、一番印象に残っているのは槍ヶ岳山荘だ。山荘に到着し、岩に張り付くようにテントが張ってあるのを見たときには緊張した。悪天候で無くて良かった。

大天荘は眺めが良くてのんびりしていた。人が少なくて、目の前は開けているので、ゆっくりと風景を鑑賞することができた。

テント場は夕方になると顔にまとわりつく虫がうるさかった。

 

テント泊縦走の食事

フリーズドライの食事
 

GWに大峯奥駈道を歩いたときと同じメニュー。

テント場ではしっかりと調理する人も良く見た。

 

 ロングトレイルの食事メニューはこちら

 

北アルプスの水場

雪渓の水場

念のために補給……

 

道中に水場はほとんどないが、小屋で補給することができる。

水の補給の不安がないのは気分的にすごくラクだった。その日の行動用とプラスアルファだけを持てばいいから、荷物も軽くなる。

 

北アルプスの装備・持ち物

服装

昼間はTシャツか長袖、夜は冷えるのでダウンがあるといい。シュラフは「リミット4℃、コンフォート8℃」の夏用シュラフで良かった。

お盆の『雲ノ平周回』の旅ではダウンは必要なかった。

 

新品のモンベル『バーサライトパンツ』に穴が開く

バーサライトパンツに穴が開く

 

今回はモンベルの『バーサライトパンツ』を使用した。このパンツのすごいところは、100gを切る重量。これは、着ていても軽さを感じるぐらいなので良かった。コンパクトに畳めるので、ザックのなかで場所をとることもない。

 

しかし、残念なことがあった。

そのひとつは、僕にはルーズなシルエットでだぼつくこと。

そして、穴がカンタンに開いてしまったこと。

新品をおろしたその初日の夕方に脱いでみると、穴が開いていることに気付いた。普通に歩いていただけだったし、穴がいつ開いたのかも全くわからなかったので、唖然とした。

あとでしっかりと確認したら、穴になりかけている擦り傷が他にも二つあった……

 

装備リスト

北アルプスの装備リスト

 

ヘリの補給を見守るハイカー

ヘリの補給を見守るハイカ

燕山荘に向けて歩くハイカー

燕山荘に向けて歩くハイカー(右)

霧のなかを歩くハイカー

 

 

裏銀座表銀座4泊5日テント泊縦走』の日程

日程

Day1 高瀬ダム~烏帽子小屋

Day2 烏帽子小屋~三俣山荘

Day3 三俣山荘~槍ヶ岳山荘

Day4 槍ヶ岳山荘~大天荘

Day5 大天荘~中房温泉

 

登頂した主な山

烏帽子岳日本二百名山

野口五郎岳日本三百名山

鷲羽岳日本百名山

槍ヶ岳日本百名山

大天井岳日本二百名山

燕岳【日本二百名山

 

北アルプス裏銀座表銀座』縦走 2019年7月27~31日)

 

裏銀座表銀座』縦走をはじめから読む!

今週のお題「夏を振り返る」