天幕ほしぞら

テントに泊まる登山とロングトレイルの旅

憧れの『信越トレイル』をスルーハイク!テントを背負ってブナの森を歩く4泊5日の旅(前編)

トレイルとトレッキングポール

 

 

約3週間の「大人の夏休み」も中盤。

北アルプスの『裏銀座&表銀座』を4泊5日で縦走したあとは、その夜に白馬へと移動しました。翌日は半日休んで疲れを取り、夕方に斑尾へと移動。

そしてその翌日、『信越トレイル』を歩き始めました。

 

 

憧れのロングトレイル

日本は世界でも有数の豪雪国である。

積雪が多いにも関わらず、人口が多い地域というのは類をみないそうだ。実は、国土の約50%が豪雪地帯に指定されているというから驚きである。

 

豪雪地帯と知られた地域は日本各地にあるが、そのひとつに秋山郷がある。秋山郷は長野県栄村と新潟県津南町にまたがる地域のことだ。栄村の森宮野原駅に行くと、「日本最高積雪地点」の標柱が建っているが、昭和20年には「駅における最高積雪量7m85cm」を記録したというから、想像を越えるような雪が降る土地なのだということがうかがい知れる。

 

今回はその豪雪地帯を5日間かけて歩いてきた。

 

そのコースを簡単に説明すると、前述の森宮野原駅から北方向に見える「天水山」が起点になる。天水山は標高1088mとそれほど高くはない山だけれど、そこには豪雪に耐えてねじまがりつつもたくましく育つブナの木々を見ることができる。

そこから、南へ80km。開田山脈の稜線を辿っていくと、もう片方の起点「斑尾山」がある。斑尾山は、スキーが好きな人には馴染みのある山かもしれない。

 

今回はそのルートを南から北へ、斑尾山から天水山まで歩いた。

 

そのトレイルは『信越トレイル』と言って、ハイカーにはよく知られたロングトレイルだ。僕にとっても、長年憧れてきた道でもある。

それは日本を代表するロングトレイルと言われているからでもあるけど、バックパッカーの先輩である故・加藤則芳氏が構想に関わった道だということが大きかった。

 

信越トレイルの案内板

 

ロングトレイルとは

ロングトレイルというと、大自然のなかを歩く旅を想像するけど、いわゆる登山道やハイキングコースを歩くのとは少し趣きが違う。

農道、林道、ゲレンデ、アスファルトで舗装された道……いろんな道を歩く。以前歩いた『六甲全山縦走路』や『生駒縦走歩道』では、住宅街やゴルフコース、墓地の中なんかも通った。僕はそんな変化のある道が好きだ。

 

ロングトレイルとは、「歩く旅」を楽しむために造られた道のこと(※)

 

その地域独自のコンセプトでアレンジされているから、ロングトレイルとはこんなところだと一概には言えないが、「その土地の自然や文化、歴史に触れる(※)」ことを目的にしているようだ。

 

信越トレイル

信越トレイルの農道

信越トレイルの木道

信越トレイルの農道

信越トレイルと蜘蛛の巣

トレイルシューズ

 

 

夏の信越トレイルとスルーハイカー

僕が信越トレイルを歩いたのは、お盆前の夏真っ盛りの時期。

「信越」という涼しげな名前から、「木陰のハイキングで涼めるな~」と楽しみにしていたが、その期待は見事に外れた。

信越トレイルは、長野と新潟の県境に位置する開田山脈のほぼ尾根上に延びるトレイルなのだが、意外と標高が低い(1000m前後)。その気温は平地とあまり変わらないのだ。

だから、とにかく暑かった。

そして、虫が多い。

至る所を刺されて、体中が「かゆい」ったらありゃしない。

 

信越トレイルが、「暑い」「かゆい」里山のトレイルだったとなると夏に行く人がいなくなってしまう恐れがあるのであまりネガティブなことは書けないが、さらに言えば、その5日間の旅で「誰一人とも会わなかった」笑

本当は、散歩風のご夫婦とボーイスカウト風の一団とすれ違ったし、途中の池には釣り師がいっぱいいたので嘘なのだけど、トレイル上でスルーハイカーとの出会いが最後までなかったのは残念なことだった。

(加藤氏の『ジョン・ミューア・トレイルを行く』には、本場のハイカー達の出会いが描かれていたから期待していたのだ。)

 

人気のないトレイルに寂しさを感じた反面、自然を感じながら歩けたことはとても良かった。信越トレイルの一番の魅力は、全線を通じて美しいブナ林を歩くことができること。神秘的な風景に、ただ独り浸ることができた。

 

信越トレイルとブナ

信越トレイルと池

霧の信越トレイル

霧の信越トレイル

霧のブナの森

信越トレイルとブナ

信越トレイルとブナ

霧のブナの森

信越トレイルとブナ

信越トレイルからの眺望

 

「後編」へ続く……

  

(2019年8月2~6日)

 ※出典『知識ゼロからのロングトレイル入門』

 

 『信越トレイル』の「後編」はこちらから読めます