天幕ほしぞら

旅を写真で綴るブログ

レスト日|上州登山の旅

登山生活

8時半の遅い起床になった。

車のバックドアを開けて、後部荷室に積んであるコンテナボックスの蓋を開ける。セットにしてあるコッフェルとガスストーブを取り出し、蓋の上でそれらを組み立てて、ペットボトルから注いだ水を火にかける。バックドアは上にはね上げるタイプなので雨は降り込まない。ドアの下に立って、目覚めのインスタントコーヒーをいれたあとは、パックごはんと親子丼のレトルトを温める。

あたりは霧に包まれていて、数台向こうの車が見えない。予報通り、今日は1日中雨が降りそうな気配だった。

 

今日は山に登るのをやめた。

膝は痛めていないが、脚全体に疲労があるからだ。

上州登山の旅の前半では3日連続で山に登った。そうしたら、膝を悪くしてしまった。その経験を踏まえて、この2日間の登山では慎重に行動してみた。

具体的には、トレッキングポールに頼らずに、太ももの筋肉を使って歩くようにする。そのおかげか、いつもは下山時に膝を痛めるが、今回は痛めなかった。でも、脚全体に筋肉の疲労を感じたので、念のためにレスト日にしたのだった。

 

登山口のほうを見るが、やはりあたりは白い霧があるだけだ。手前にあるはずのトイレすら見えなかった。昨日からひんやりとした秋雨がシトシトと降り続いている。昨晩、車でやってきた二人連れは、この霧と雨のなか出発したようだが無事だろうか。

この先数日間の予報も思わしくない。晴れたら登り、雨が降ったらレストというような“晴耕雨読”の登山生活が理想だが、上州登山の旅に出てからは雨続きになっている。

 

霧のせいで憂鬱だったが、椅子に座って一息つくと、次第に気分も落ち着いてきた。

昨日の登山で気付いたことや車中泊や登山用具の改善点などが思い浮かんできたので、PCを取り出してメモをする。

白樺林を見ながら、キーボードをたたく。

すると今度は、なんだか贅沢な暮らしをしているように思えてきた。

 

山の楽しみ方

銀山平温泉の川

 

昼になって、次の山に向かって移動した。

途中の銀山平温泉で『白銀の湯』に入る。

平日の昼の3時だったせいか、誰もいなくて貸し切りだった。

 

湯舟からは銀山平の山々が見えた。

 

小さい山のピークから尾根が伸び、分岐して支尾根に枝分かれしている。以前はそんなことに気も留めなかったのに、地図読みを勉強したせいか、気付くようになった。

広葉樹が色づいていて目に穏やかだ。見頃はあと10日後になりそうな感じだった。

小さな山の向こうを見ると、そこは谷になっていて、灰色の雲が右から左へと形を変えながら流れていく。そして、その向こうには黒い塊があった。その山の名前はわからないけど、ギザギザとした尾根が真横に伸びていた。

あの尾根はどんな景色なんだろう。きっと、低木のなかを細い尾根道が走り、ごつごつとした岩を乗り越えていかねばならないのだろう。湯舟からギザギザ尾根の風景を想像した。

 

低い山と高い山。

どちらが好きなのかなと考えてみた。

 

私は基本的に森の中にいるだけで幸せな人間だ。山の麓の雑木林を歩くだけで心が休まる。

だから、いままで、高い山に登りたいという気持ちは一切起きなかった。どこそこに登頂したとか、いくつ登ったとか、そういう記録にも興味がなかった。

でも最近は、いくつかの百名山を登ってみて、高い山も良いものだなと思うようになった。

高い山はドキドキする。岩場や鎖場では緊張する。急いで登らないと、日が暮れてしまう。足早になってしまう。

そういうのはやっぱり好きじゃないけれど、高い山ならではの絶景が見られるのがすごく良い。登るのは大変だけど、その絶景を見ると、「この風景を見るために登ってきたのだ」と気分が高揚する。 

 

今回の百名山を登る旅は、そういう見たことのない風景を見る旅だった。

温泉に浸かってこの数か月を振り返っていると、そのときの興奮がぽつりぽつりと蘇ってきた。

 

低い山に加えて、高い山か……

楽しみが2倍に増えたけど、こういうのはオッサンになる前に知りたかったよな。

 

「絶景、絶景……」 

雨がぱらついていたけど、露天風呂から見上げる山は飽きなかった。

周りは新しいログの民宿が取り囲んでいたが、雪が積もる時期もまた良いに違いない。

 

次の山へ

奥只見湖付近の看板


いつまでもお湯に浸かっていたかったが日が暮れてしまう。次の山へ向けて再度出発した。

深い森に囲まれた奥只見湖を左に見ながら50kmほど山道を走る。

 

夜になって、目的地の鷹ノ巣の駐車場についた。

駐車場には2台の車が止まっていた。バイオトイレはきれいにしてあったが、水場はないように思った。駐車場は車道横にあったが、車はほとんど通らなかった。かなり山奥に入っているからだろう。

 

食事を終えて後片付けしていると、隣の車の灯りが付いたのが見えた。車内灯の下で地図を広げているようだった。

明日の山は、今回登る山のなかでは最難関だと思われた。

私も車に籠り、もう一度ルートをたどることにした。

(2017年10月10日)