天幕ほしぞら

テントに泊まる登山とロングトレイルの旅

登山のイメージが変わっていく|那須岳【百名山】

男前な那須岳

朝目覚めて外を見ると、警備員が車の誘導をしていたのでビックリした。

昨夜は大きな駐車場に15台ほどしか停まっていなかったのに、すでに車で混雑している。

そうか、今日は日曜だ……

しばらく家を空けているから曜日の感覚がなくなっている。

登山道が混む前に出発したかったので、そそくさと用意を始めた。

 

 

那須岳(なすだけ・標高1917m)は、栃木県にある日本百名山だ。

-日本百名山の著者である深田久弥は書中に『那須岳とは那須五岳の中枢を成す茶臼岳、朝日岳および三本槍岳のこと』と記している(Wikipediaより)-

主峰は茶臼岳だが、三本槍岳のほうが若干標高が高い。今回は峠の茶屋駐車場から出発し、最初に朝日岳を登り、その後三本槍岳、茶臼岳の順番で登った。

 

 

那須岳はこれまでの百名山とは違い、硬派な印象の山だった。

那須岳はいまも噴煙を上げる活火山。高い木は生えておらず、赤い石がゴロゴロしていた。石の山肌を貫くように登山道が伸びているのが見えた。

今日もゲイターをつけて出発したが、石だらけの登山道だから、水や泥がはねてズボンの裾を汚すような感じではない。ゲイターをつけていると足さばきがしやすいので状況に関わらず身につけていたいところだけど、ごつい見た目が浮いている感じもするのでバッグにしまう。

 

那須岳はロープウェイもあってアクセスがしやすい。ガチガチの登山の格好ではない観光客も多く歩いていた。

小さな子供を連れた家族連れにも抜かれつつ、リラックスしてマイペースで進む。

前方を見上げると、左に茶臼岳、右に朝日岳が見えた。

どちらもガスがかかっているものの、そこに至るまでの見通しは良い。すぐに峰の茶屋跡避難小屋の赤い屋根が稜線に見えた。いかにも登山っぽいカッコイイ風景だ。

 

那須岳の登山客

 

峰の茶屋跡避難小屋からは進路を北に取り、朝日岳を目指す。

朝日岳を登るにつれてガスに包まれ、風が強くなってきた。駐車場でも今日は寒いなと思ったが、そのうちに耳がちぎれるような冷たさになる。ニット帽が欲しいくらいだ。山はもう冬支度をはじめているのかもしれない。

 

那須岳の登山道

 

まもなく朝日岳に到達したが、頂上はガスっていて眺望はなかった。

上州登山の旅に出てから、ずっと天候には本当に恵まれていない。

頂上からの景色を見渡せた山はいままでいくつあっただろうか。思い出せないぐらいだ。

 

那須岳の三本槍

 

淡々と道を引き返し、さらに北にある三本槍岳へと向かう。

そこからは一旦高度が下がって、湿原に降りた。すると、泥を回避できないぐらいにぬかるんでいて、靴がまたたくまに泥だらけになった。このころには雨も降りだしていて、結局は今日もゲイターの出番がやってきた。

 

雨と霧のなか三本槍に到達すると、普通の格好をした若者のグループと遭遇した。那須岳はロープウェイがあることもあり、普段着の人が多いのは谷川岳と似ている。しかし、頂上は見渡す限りグレーな風景があるだけで、冷たい雨と風で寒々としていた。若者は雨に濡れて寒そうにしている。大丈夫だろうか。私も長居はやめて、すぐに道を引き返した。

 

登山のイメージが変わっていく

那須岳の眺望

 

三本槍岳からは同じ道を引き返し、峰の茶屋跡避難小屋まで戻った。

外でお湯をわかしている人と少し話をした。

 

私に声をかけてくる人は決まって男性で、私と同じくらいかそれ以上の歳の人が多い。同じ単独行者として、声をかけやすいのかもしれない。

聞くと、この先の三斗小屋という温泉に向かうのだと言う。「温泉があるんですか?」と思わず聞いてしまったが、山のなかに温泉があるというのは初心者にとっては驚きだった。そしてその後は、北温泉に行く予定だそうだ。

 

先日の燧ケ岳でもテントを担いで山の奥のルートへ向かう人に出会ったけど、登山といってもいろんな方法があるんだなと思った。私がしているのは駐車場と山を往復するだけの小さい範囲の登山なので、ルート図のなかを広がっていく旅の話を聞くのは新鮮だった。それは横に移動する旅であり、私が好みそうな旅の仕方だった。

 

小屋の前で一息入れたあとは、朝日岳とは逆にある茶臼岳に登った。

こちらは観光客も多く、マーキングだらけで迷う心配はない。展望のない茶臼岳の頂上では、多くの人が昼食を食べていた。

 

トレイルランニングシューズとゲイター

 

下山した後は靴とゲイターの汚れをブラシで落とし、少し休んでから、次の山へと出発した。

 

那須の観光地を通る道を数珠なりになって走り、高度を下げていく。

お店を見ると、他の有名な観光地と同じように環境に配慮されて、看板が茶色に統一されていた。

どこもおしゃれで高そうな店ばかり。そして、おしゃれな格好をした人たち。

私が入れそうな店はどこにもなかった……

那須を通り過ぎ、日光までの下道を100キロほど移動する。

 

道の駅日光付近では、地元のお祭りに遭遇した。

人々が道路を練り歩いていて、頭にサングラスをかけた外国人が写真を撮っていた。

旅をしていると時々こういう地元のイベントに出くわすことがあるが、期待していなかったのにもらえたオマケみたいで嬉しくなる。

明日の準備は後回しにして、夜の祭りの雰囲気を見学させてもらった。

(2017年10月15日)