天幕ほしぞら

テントに泊まる登山とロングトレイルの旅

感動の『鈴鹿セブンマウンテン』2泊3日テント泊縦走(後編)

鈴鹿セブンマウンテンの朝

 

この記事は、『鈴鹿セブンマウンテン 2泊3日テント泊縦走』の後編です。

 

『鈴鹿セブンマウンテン』は、三重県の鈴鹿山脈を貫く全長約43kmのロングトレイル。

11月2日に藤原岳登山口を出発した僕は、途中の石榑峠と杉峠でテント泊し、最終日を迎えました。

 

 

 

Day3(11月4日) 杉峠~椿大神社

霧と風のなかで、テントを畳む。

昨晩は雨も降ったみたいで、テントはびしょぬれだった。どっちにしろ結露でテントは濡れてしまうのだが……。それにしても、雨が降っていないのは幸いだ。

最終日の今日は行程が長いから3時半に起きて、5時半に出発した。

 

しかし、出発する前からルートがわからない。杉峠のテント場は石積みの跡が残る場所だが、多くの石垣がくずれていて、登山道が分かり辛くなっていた。

目印のテープも見当たらない。4人ほどのソロの男性が同じように暗闇で立ち往生していた。ヘッドライトだけでは進むべき道が全くわからないため、GPSでおよその方角を確認しつつ、急斜面を登ってみる。すると、踏み跡を発見した。

谷からジグザグに登って稜線上に出ると霧と風が強くなり、視界が悪くなった。

 

尾根を登るハイカー

霧に包まれるハイカー

藪漕ぎ

背丈を越える藪漕ぎ

 

午後になると、天気が回復。

しかし、3日目は、1、2日目と違い、感覚では2倍ぐらい大変だった。

トレイルは、岩場や崩落地など、注意が必要な場所がいくつかあった。「このあたりの山は風が強い」と聞いていたとおりで、今日は台風のような風が一時的に吹きつけることがあった。バックパックを背負っているので、何度かあおられて危険を感じる。

 

そして、御在所岳の往復ではかなり消耗した。時間が押していたので、急ぎ足で登る。同じところに戻ってくるのだから、ここでは荷物をデポしておいても良かったかもしれない。

山頂のトイレは使用不可で落ち込んだ(リフト?のほうへ歩けばある思うが時間に余裕がなかった)。風が冷たい。岩に隠れて行動食のピーナッツをほおばった。

 

晩秋の森

晴れてきた。落ち葉の積もる森を抜ける。

御在所岳を登る登山客

御在所岳は登山客が多かった

伊勢湾

伊勢湾が見える

鈴鹿セブンマウンテンのトレイル

稜線を歩く。御在所岳からは、また独りになった。

ススキとトレッキングポール

入道ヶ岳

入道ヶ岳で自撮り

 

セブンマウンテンの最後の山、入道ヶ岳へ向かって尾根を登る。

標高が上がったところで、後ろを振り返ると、今まで歩いてきた山々が見えた。

「こんなに歩いてきたのか……」

地図で見ると、1日に歩く距離は短く感じる。それは、仮に車であれば30分で着いてしまうようなあっけない距離だ。しかし、いざ自分の足で歩いて、その道や山々を振り返ってみるとその距離の果てしなさに驚くことがある。それはこの1年で何度か縦走をして感じてきたことだった。

「自分はこんなに遠いてきたんだ」思うと、目に溢れるものがあった。

 

そして、まもなく入道ヶ岳山頂に到達した。

前情報を入れずに出発したので、山頂に白い鳥居が建てられているとは知らなかった。鳥居は夕日に照らされて黄金に輝き、まるで僕の到着を待っていたゴールラインのようだった。

大パノラマが広がる山頂はまるでパタゴニアで吹くような強い風が吹いていた。ビュービューと耳元を風が切り、ストラップがパチパチと音を立てた。大きなバックパックを背負った僕は風にあおられてまともに立っていられない。風に吹かれて、誰もいない山頂でヨロヨロとダンスしている自分に大笑いしつつ、自撮りの動画を撮る。そうしたら、また涙があふれてきた。

 

入道ヶ岳の鳥居

(2019年11月2~4日)

 

『鈴鹿セブンマウンテン』を終えて

この記事は現在、2020年の1月に書いています。

鈴鹿セブンマウンテンを歩いたのは、昨年の秋のことですが、いまでも「良い旅だったな」と思い出すことがあります。

 

昨年は、春から秋にかけて、いくつかのロングトレイルを歩いてきました。

ダイヤモンドトレール、生駒縦走歩道、六甲全山縦走路、大峯奥駈道、熊野古道中辺路、信越トレイル、北アルプス縦走、そして、鈴鹿セブンマウンテン。

それぞれが個性に満ちていたので、それぞれがしっかりと記憶に残っています。登山では忘れていることも、ロングトレイルだと強烈な印象です。

それは、毎日朝から晩までひたすら歩くだけの、地味で辛い面があるからかもしれません。でも、その分だけ、ゴールしたときの感動が大きいのも長距離を歩く旅の良さです。 

クタクタになってやっとのことでゴールに辿り着いたというのに、「次はどこを歩こうか」と思いを巡らしている。

僕にとってロングトレイルは、そんな魅力がある旅なのです。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。