2019年のゴールデンウィークは、以前から憧れていた紀伊山地のロングトレイル『大峯奥駈道』と『熊野古道中辺路』を7泊8日でテント泊縦走しました。
大峯奥駈道
プロローグ 山伏の道を歩く『大峯奥駈道』テント泊縦走 0日目
1日目 修行の道『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(1日目)
2日目 GPSと水場『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(2日目)
3日目 山伏とほら貝『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(3日目)
4日目 フライクリークUL1EX『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(4日目)
5日目 いまここ!
6日目 ハイカー『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(6日目)
熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)
プロローグ 巡礼の道『熊野古道中辺路』1泊2日テント泊縦走(0日目)
7日目 ノックアウト『熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)』1泊2日テント泊縦走(7日目)
8日目 旅の終わり、海へ。『熊野古道中辺路』1泊2日テント泊縦走(8日目)
まとめ
ロングトレイルの装備 ロングトレイルを歩いたので装備・持ち物をまとめました。【大峯奥駈道~熊野古道中辺路】
雨の日のバックパッキング
朝、目を覚まして気配を伺うと、フライシートにポツポツと雨が当たる音がする。
やっぱり、雨か……
旅に出てからずっと太陽を見ていない。
『上州登山の旅』でも雨続きだったし、私は絶望的に雨男なのかもしれない……。
朝4時に体を起こす。
このところは大体この時間に起きて、歩く準備を始めることにしている。
テントは専用袋に収納したのちに、2重にしたレジ袋に入れる。シュラフも同じく2重にしたレジ袋に入れる。それらをバックパックのボトムに入れる。バックパックは2気室で使うことで、濡れたものの水が上の部屋に上がってこない戦略。
上の部屋には濡らしたくない物が入る。インナーパックは、ポリ袋70Lを使用している。
6時に行仙宿を出発した。
昼前からは、雨脚が強くなってきた。
普段の登山では天気を選べるが、連泊となると天気は選べない。
案内に熊野本宮大社の文字が出てきた。
終わりが見えてきた。
嬉しい2割、嬉しくない8割。
難所を行く
『新宮山彦ぐるーぷ』の地図に「約6mの垂直降下」と書いてあったクサリ場に来た。
私の前を若いカップルが下りていた。バックパックの重さでズルズルとすべっている。
私は高所は足が震えるほど苦手なのに、クライミングにハマっていた時期がある。
その経験から言うと、岩場ではとにかく慌てないように心掛けることが大切だ。そして、「『確実』を積み重ねれば怖くない」と心で唱えてから降りるようにしている。
まず、両手でガッシリと何かを掴む。絶対に落ちることはないことを確認する。
そして、重要なのは足場だ。慌てずに、冷静に下を覗いて、足場がどこにあるのかを見る。足を伸ばして、体重をかけてみる。足裏で体重がしっかりと乗っている感覚を確認する。不安なら違う足場を見つける。焦って乗り込むと、不安定な足先がさらに焦りを生む。ゆっくりでいい。まだ手は疲れていない。絶対に落ちることはない。
そうやって確実な足場をひとつひとつ積み重ねていけば、意外と簡単に下りることができる。
それでも私は高所が怖い。あとで後ろを振り返ったら、ゾッとした。
「ここからの下りは、ゆっくりと 膝故障に注意」
『新宮山彦ぐるーぷ』の地図を読んでいて一番嫌な感じがしていたのは、この区間だった。まだ旅の中盤だから、ここで膝を痛めるわけにはいかない。
実際に歩くと情報通りで、長い下りが続いた。連日の雨で泥だらけで、気を抜くとスリップする。慎重に下りていく。
しかし、膝はもってくれなかった。
5日目にして、とうとう膝が痛みだす。
泣きたくなった。
水没……
玉置神社に到着したときは、全身ずぶぬれになっていた。
レインウェアのポケットに入れていたスマホは壊れた。ポケットの中を覗くと、雨水が3センチ貯まり水袋のようになっている。思いっ切り水没させてしまった。以前の『上州登山の旅』のときも、愛用していたコンデジをポケットに入れていて壊したのに、またやってしまった。
レインウェアが体に張り付き、体が冷えている。
膝も、腰も、痛い。
何もかもボロボロだ。
テントを張る気力が湧いてこないが、いつまでもトイレの軒先で突っ立っているわけにはいかない。トイレ横のスペースにテントを張り始める。
テントに潜り込む。テントの底も当然水浸しのままだ。硬いアスファルトにビニールが張り付いているように透けている。
レインウェアは再び着ることができないぐらいに内側まで濡れてしまった。グローブもぐちょぐちょで、苔むした石や木をたくさん触ったせいで緑色になり、強烈に苔臭い。
テントに入ってザックの中身を確認すると、中にも浸水していた。
今回はザックカバーを被せて、中にはインナーバックを使用している。それでも、本格的な雨の場合は、インナーバッグの中まで湿ってしまう。インナーバッグの中に入れたナイロン袋の中でさえ湿っていた。
幸い、さらにビニール袋で包んでおいたトイレットペーパーは濡れていなかった。濡れた地図やカメラなどを乾いたペーパーで拭くことができた。
星空
今回はフリーズドライの食事を持っている。
モンベルの『白いご飯』にアマノフーズの『畑のカレー』をかけて食べる。
うまい。
雨で食べることができなかった、行動食も貪り食う。
温かい飯を食べると、体に生気がじわじわと湧いてきた。
隣のテントからは、「雨に濡れたものをどうするのか?」という会話が漏れて聞こえてきた。
皆、苦労してるんだな。
自分の惨めさが和らぐ。
夜に雨がやみ、外に出る。駐車場の真ん中に立って空を見上げると、星が出ていた。この旅で初めての星空だ。
ずっと重いバックパックを背負っていたせいで、歩き方がガニ股になっている。
標高1000mの玉置神社では、シュラフがいらないくらいに暖かかった。
シュラフはしめっぽかったから、ちょうど良いと思った。
(2019年5月1日)
大峯奥駈道5泊6日テント泊縦走(5日目)の記録
行程/行仙宿~玉置神社
天候/雨時々曇り
通過した主な山/笠捨山(標高1353m)