2019年のゴールデンウィークは、以前から憧れていた紀伊山地のロングトレイル『大峯奥駈道』と『熊野古道中辺路』を7泊8日でテント泊縦走しました。
大峯奥駈道
プロローグ 山伏の道を歩く『大峯奥駈道』テント泊縦走 0日目
1日目 いまここ!
2日目 GPSと水場『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(2日目)
3日目 山伏とほら貝『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(3日目)
4日目 フライクリークUL1EX『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(4日目)
6日目 ハイカー『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(6日目)
熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)
プロローグ 巡礼の道『熊野古道中辺路』1泊2日テント泊縦走(0日目)
7日目 ノックアウト『熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)』1泊2日テント泊縦走(7日目)
8日目 旅の終わり、海へ。『熊野古道中辺路』1泊2日テント泊縦走(8日目)
まとめ
ロングトレイルの装備 ロングトレイルを歩いたので装備・持ち物をまとめました。【大峯奥駈道~熊野古道中辺路】
重い……
雨上がりの朝。
駅までの道を歩いていると、バックパックが肩に食い込んでくる。これから130kmも歩く長丁場で、この重量を担いで歩けるのか不安でならない。
荷物の軽量化については、この数日間ずっと迷っていた。
最後まで悩んだのは「ダウンウェアを持つかどうか」だった。ダウンジャケットとパンツを我慢すれば、約500グラムは軽量化できる。しかし、最近登っている山に比べて、今回の山は標高が高く気温が予想できないために、家に置いていくという判断ができなかった。
電車に乗り込むと、通学の学生のなかにアウトドアの格好をした若い男性が座っているのが目に入った。Tシャツに短パン姿。陽に焼けた太ももがたくましい。
足元には40L程度のミニマムなバックパックが置かれていた。『山と道』のマットが括りつけられている。一見して、かなり軽量化されているのがわかった。
彼も大峯奥駈道を歩くのだろうか?やはり、彼のような軽々とした装備にすべきだったのではないか?
もう旅ははじまっているというに、まだバックパックのことを気にしている。
終点の吉野駅で下りたのは10人ほど。皆、大きなバックパックを背負っていた。
外に出ると雨が降り出していた。
駅の軒先で、誰もが声を交わすこともなく、それぞれがレインウェアを着こんで、ひとり、またひとりと出発していく。多くの人は少し歩いたところで振り返って駅舎の写真を撮っていく。最後になった私も駅舎の写真を撮って歩き出した。
2019年のゴールデンウィークは大峯奥駈道を歩く
今回はかなりの長丁場の旅になる。
まずは、大峯奥駈道の約92kmを5泊6日で歩く。熊野本宮大社にたどり着いたら、そのまま同じ熊野古道の一つである『中辺路』に入り、小雲取越、大雲取越の約35kmを2日で越えて那智の海を目指す。合計約130km、7泊8日の旅だ。
今日はその初日で、目標は22キロ先の『小笹の宿』にした。
修行の道
吉野駅を出発すると、すぐに舗装路の急な上りになった。
すっかり忘れていたが、昨年の花見の時期に吉野山に登ったことを思い出した。その時も「傾斜がキツイな」と思ったのだ。違うのは、前回は空身だったのが、今回は20キロのバックパックを背負っているということ。
「もうそろそろ坂道も終わるだろう」と思うが、終わらない。山の上まで上りが続く。
しばらくして、親子連れやトレイルランの人に抜かれる。次の電車に乗ってきた人達がもう上がってきたようだ。
途中に現れた大きな山門に惹かれて寄り道する。まったく知識を入れずにやってきたが、修験道の総本山である金峯山寺だった。本堂(蔵王堂)の迫力がスゴイ。蔵王堂は木造の古建築としては奈良の東大寺大仏殿に次ぐ大きさだそうだ。
舗装路が終わると土の登山道に入った。ここからは稜線歩きになるようだった。
視界が開け、熊野の山々が前方に連なるのが見えた。そして、その山々に覆いかぶさるように、どんよりとした雲が垂れこめている。ひときわ高い山には雪が被っていた。
登山道に入ってからは、雨と風が強くなった。シェルジャケットとゲイターを身につける。
シェルジャケットの下には、Tシャツと化繊の長袖を着ている。手袋はモンベルのウイックロンZEOサーマル グローブを身につけ、首まわりにフリースを巻いた。
ゴールデンウィークにしては随分と重ね着しているように思えるが、結局、これを一日中着ていた。
出発前にほかのブログを読ませてもらったが、同じゴールデンウィークの時期でも、暑かった年と寒かった年があったようだ。ウェアの選択は本当に難しい。
青根ヶ峰を超えてから、脚の付け根が痛みだした。「まず脚の付け根が痛みだし、まもなく膝が痛くなる」というのを最近繰り返している。初日だというのに、不安を抱えてしまった。
まもなく二蔵宿に到着。
すでにテントを張っている人がいた。自分も脚の状態が不安だし、すでに疲れているから、ここで一泊する案が頭をよぎる。軒先で行動食を食べながら考える。
まだ、時間が早い。先に進もう。
女人禁制の霊場
地面を見つめて、ただひたすら、登りと下りを繰り返している。
今日は単独行者の男性が多い。抜きつ抜かれつ進んでいる。
早い人もいるし、遅い人もいる。
でも、人のことは気にする余裕がない。
荷物が重くて肩が痛い。足も上がらない。一歩ずつ歩を進めるだけで精一杯だ。
女人結界門前で休憩を取った。
写真を撮っていると、後ろから男性の単独行者2人がやってきた。
そこで合点がいった。
ほかの山と雰囲気が違うなと感じるのは、女性が歩いていないせいかもしれない。
大峰山(山上ヶ岳)は山全体が女人禁制であり、五番関から阿弥陀ヶ森までは女性が歩くことはできない。今日はその区間だった。
女性がいない道を歩くのも修行……。
モクモクと歩いている人が多い気がするのもそのせいだろうか。
丸太の階段を下りる。
右足の靴底が何かにひっかかった。すぐに外れるかと思ったが、外れない。反対の左脚が下段に接地したところで踏ん張って、前に転びそうになるのをこらえた。
右足を見ると、丸太を止めている鉄棒が垂直に5cmほど飛び出ていて、そこにゲーターの底の紐がしっかりと奥まで引っかかっていた。幸い、前方に着地した足で踏ん張ることができたが、もし段差が大きくて大股になっていたらと考えるとゾッとする。バックパックの重さに耐えられずに転倒し、足を折っていたところだった。大きな冷や汗をかいた。
長かった初日が終わる
先に進むにつれ、天候は悪くなっていった。風の勢いが増し、時折、みぞれもぱらついている。
夕方に洞辻茶屋に到達した。繁忙期は営業しているようだが、今日は無人だった。
荷物を下ろし地図を取り出す。目標の小笹の宿はあと4kmほど先になる。
すぐに2人の単独行者が続けて到着した。
天候が荒れてきている。自然とキャンプ地についての話になった。話していると突然雪が降り出し、風が建物を揺らした。
それを見ていたら、先に進む気力がなくなった。明日歩く距離が増えてしまうが仕方がない。ここにテントを張ることを決めた。
ほかの2人もここに泊まることにしたようだ。テントを張っていると、学生グループが到着し、最終的には10張り程度のテントが並んだ。
初日の夕食は、レトルトの牛丼にした。少しでも重そうなものから食べて荷物を軽くしたい。
レトルトの牛丼を温めたお湯に指をつけると、指の感覚が復活した。
テント内でも吐く息が白い。
やっぱりダウンを持ってきて良かった。ダウンを上下とも着て、モンベル#2のシュラフに潜り込むと、その暖かさで体の緊張が溶けた。
(2019年4月27日)
大峯奥駈道5泊6日テント泊縦走(1日目)の記録
行程/7:30吉野駅~17:35洞辻茶屋
天候/曇りときどき雨
通過した主な山/大天井ヶ岳(おおてんじょうがだけ)
メモ/自作サコッシュのチャックが壊れる
移動距離・所要時間/