2019年のゴールデンウィークは、以前から憧れていた紀伊山地のロングトレイル『大峯奥駈道』と『熊野古道中辺路』を7泊8日でテント泊縦走しました。
プロローグ 山伏の道を歩く『大峯奥駈道』テント泊縦走 0日目
1日目 修行の道『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(1日目)
2日目 GPSと水場『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(2日目)
3日目 山伏とほら貝『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(3日目)
4日目 フライクリークUL1EX『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(4日目)
6日目 ハイカー『大峯奥駈道』5泊6日テント泊縦走(6日目)
熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)
プロローグ 巡礼の道『熊野古道中辺路』1泊2日テント泊縦走(0日目)
7日目 ノックアウト『熊野古道中辺路(小雲取越・大雲取越)』1泊2日テント泊縦走(7日目)
8日目 いまここ!
まとめ
ロングトレイルの装備 ロングトレイルを歩いたので装備・持ち物をまとめました。【大峯奥駈道~熊野古道中辺路】
蟻の熊野詣
バックパックを背負って130キロを歩く旅も最終日だ。
快晴。
テントをたたみ、5時半に出発した。
すでに難所は越えているから、あとは那智の海へと下るのみのはずだ。
まもなく、熊野那智大社に到着した。
さすがにゴールデンウィークの有名な観光地だけあって、「蟻の熊野詣」のような人出だった。
実は、日本人の観光の起源は、熊野詣やお伊勢参りにあるという。今も昔も、人々は何かを求めて熊野にやってくるのかもしれない。
観光客に交ざって階段を下り、那智の滝が見られる飛瀧神社へと向かう。那智の滝は133mの落差を誇る日本一の滝だ。滝つぼの深さは10m、水量は毎秒1トン。何度か訪れているが、いつも印象が変わらない荘厳な滝だ。
そして石段を登り返し、熊野三山のひとつ熊野那智大社をお参りする。境内を通り抜けると、すぐ隣には青岸渡寺があった。
神社と寺院が隣接して建つこの空間は不思議だ。まるで「どこでもドア」を通り抜けたみたいな違和感がある。でも、これこそが神仏習合時代の名残りなのだそうだ。
お参りのあとは、杉の巨木の間を通り抜ける「長~い」石畳で知られた大門坂を下った。
そして、舗装路に出てからは、夏のような日差しが容赦なく照り返す道を、海へ向かって歩き続ける。
この旅は最後まで「修行」が続くのだ。
那智駅に到着
そして、突然終わりがやってきた。
那智駅に到着した。
大峯奥駈道で何度か見かけた若者が、駅のベンチに座っていた。彼も同じように熊野本宮大社に到着したあとは中辺路を歩いてきたのだろう。親御さんとは熊野で別れて、ひとりで歩いてきたようだった。彼はスゴイ速さで歩くので覚えていた。
彼はいま何を思うのだろうか。
この道を歩き終えて、何を感じているのだろうか。
私も駅のベンチに座って休みたいが、まずはゴールの海へたどり着かねばならない。そのまま線路をくぐり、海へと向かった。
暗い階段を登ると、空が開け、そこに目指してきた那智の海があった。
海はパステル調の淡い青色をしていた。バックパックを背負ったまま、白い砂浜を一直線に歩いていく。砂が跳ね上がって、足首にさらさらとかかる。
そして、波打ち際に立った。
「ついた」
太平洋。
紀伊半島のど真ん中から、歩いてきた。
気付いたら、しばらくの間「波打ち際で、地平線を見つめてたそがれているバックパッカーのオッサン」になっていた。
頭を垂れて、足元に打ち寄せる波を見る。キラキラと、波が寄せては返していく。水が靴を洗って、砂が流れていく。
私はいま何を思う。
波は、ザザー、ザザーと何度も繰り返したけれど、心の中に浮かんでくる言葉はなかった。
ただただ、厳しかった。厳しい旅だったと思う。
次の旅へ
駅に戻り、道の駅で買った地元の鮨を食べ、自動販売機でアイスを買う。
それから、駅に隣接している温泉に入った。
風呂の鏡を見て、肩と腰骨付近に赤いあざがあることに気付いた。膝もそうだが、最後まで体がもってくれてよかった。
新しい服に着替え、同じく、敷地内にある『熊野那智世界遺産情報センター』を見学した。
「祈りをもって、熊野を目指し、何日もかけて旅をしたのです」
いにしえの旅人の様子を描いた展示に、しんみりとさせられた。
(2019年5月4日)
熊野古道中辺路1泊2日テント泊縦走(8日目)の記録
天候/晴れ