天幕ほしぞら

登山、カヤック、釣りの初心者がいろいろと模索するブログ。

自分らしい旅 【百名山】瑞牆山 

鹿

夜中の3時到着。駐車場の手前で鹿の出迎えがあった。

若い頃に、日光戦場ヶ原の駐車場で、同じように鹿の出迎えを受けたことを思い出した。

その時は、ハイエースぐらいの大きさの鹿が、突然目の前に飛び出てきたから本気でビックリした。鹿もえらいビックリしていたけど、私のほうがビックリしていた。きっと、あれはライトに照らされてデカく見えたんだろうけど、確かにハイエースぐらいあった。

 

車中泊する瑞牆山荘の無料駐車場には20台ほどの車が停まっていたが、まだ充分の空きがあった。窓に目張りをして、アポロを点け、スーパーの弁当を食う。先週登った金峰山の隣の山だから寒いだろうと思っていろいろと装備してきたが、それほどでもなかった。

 

いざ瑞牆山へ

9時起床。起きたときにはほぼ満車だった。1時間の用意のあと、10時出発。

また登山口から人が多かった。百名山はいつもこんな感じなのかもしれない。

穏やかな登りとなり、ミズナラの樹林帯を歩く。

 

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瑞牆山(みずがきやま)は山梨県にある標高2230mの山だ。百名山は私にとっては4座目になる。

瑞牆山は、視界の悪い低山の大きくなったバージョン。距離が伸びて、難易度が上がった感じだ。

途中には鎖場とハシゴがあった。小さな子供には大変だったかもしれない。富士見平小屋にはテント場があった。

 

今日も歩き始めてすぐなのに多くの人に抜かれた。

初心者なので例のごとく登山者を観察していると、ごつい登山靴を履いている人が多いことに気付いた。しかし、途中に岩場が連続したが、ソールが硬そうで岩の上に乗ったときにすべりそうに思えた。私は登山靴は高くて買えないし、足裏感覚が欲しいからトレランシューズを履いているけど、どうなんだろう。滑らないのだろうか。

しかし、人はぎょうさん見物できたが、あまり展望がなく気持ちが上がらない。常に人が目の前を歩き、鎖場で渋滞し、早い人が来ると「どうぞ」と道を開ける繰り返し。あまり見るべきところがないなあ、と思いながら進む。途中にしゃくなげの群生があった。

 

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頂上に着いたと同時に視界がパッと広がり、「着いた~」と鬱々とした気持ちが空に放出された。

景色を求めて岩の傾斜を登るとそこは崖で、下には鬱蒼とした森が広がるなか、ニョキッと大きな岩が起立していた。大ヤスリ岩だ。もう少し下をのぞき込もうとしたが柵がなかった。当たり前か。背中のバックパックが押されないか後ろを気にしながら、岩が良く見える場所へ移動すると、クライマーが岩にはりついているのが見えた。あまりにも高度がありすぎて、なんだか現実感がない風景だ。

 

山頂は風が強かったが、混雑していた。山頂は狭かった。こんなに大勢の人が岩の上に乗ったら、ポロッと取れて皆一直線に落下してしまうんじゃないだろうか。でも、絶景を見ながらご飯を食べたいという気持ちは皆一緒のようだ。途中に見るべきところがなかったから、意を決して頂上に陣取りたいのだろうと思った。

私は風が強いし、とれちゃうのが怖かったから、一段下に降りることにした。風を避けられる木の生えた場所でシートを取り出す。周りを観察すると、スーパーの弁当を食べている人はいなかった。以前は私も低い山でもわざわざ湯をわかしてカップヌードル食べていたが、弁当のほうが素早く食べれて腹持ちがいい。でも若い人はストーブの上にコッフェルを乗せて、キャハキャハとやっている。やっぱりオッサンには想像もつかないオシャレなものを食べているのだろうか。

 

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周りにグループが増えてきた。山頂を窺うと人だかりになっているから、もう岩の上には良い場所がなくなったのだろう。

「早く出発したほうがいいかもしれない」登りの鎖場で順番待ちをしたことを思い出した。

手早く弁当を平らげ、休憩もそこそこにゴミの袋をバックパックに突っ込み、いざ出発だと立ち上がったとき、いきなりブーーーンという音が頭上にやってきた。「やばい!」スズメバチだ。反射的に姿勢を低くして、後ずさりした。田舎に住んでいたときにはスズメバチはすごく身近な存在だった。腰をかがめたまま周りを見ると、山ガール達は輪になったまま何事もなく飯を食べている!そうか、スズメバチを知らないのか!!!

 

ん?でも、なんか変だぞ。

ブーーーンっていうのが、ずっと一定だ。

気付いた。マジかよ……。これはドローンじゃないか。デイパックを背負い、岩に上がると案の定ドローンだった。山頂の周りをなめるようにドローンが飛んでいる。

ブーーーン。

ブーーーーーーーン。

大ヤスリ岩の写真を撮ろうとしている人達もカメラを下ろしてそれを眺めている。ドローンの撮った映像は好きだが、これはない。写真を撮ってもドローンが写り込んでしまう。それに山頂は狭く、柵がない。落ちてこないかヒヤヒヤものだ。

 

まあ、人それぞれ楽しみ方があるから仕方がない。不快な音だけど。

気を取り直して、歩きだした。

下りでは速度を出した。鎖場で混むのが嫌だったのもあるが、登りで多くの人に抜かれるのがずっと気になっていた。「登山は早く登れることも大事だ」と、どこかで読んだ気がする。思い出した。この前に読んだ『孤高の人』だ。

それでも、ソロで歩く人、二人連れに抜かれる。もう少し速度を上げないといけない。抜いていった二人を追うようにして速度を上げる。このままいけば、鎖場でも混むことはないだろう。帰りの高速の渋滞にもハマらずに帰れるかもしれない。

視界から二人が消えないスピードで駆け下る。必死についていく。

 

……。

 

急ぐオッサン。

 

……何をしているんだ、俺は。

 

このままじゃあ、あれだ。

瑞牆山に登った。それだけになってしまう。下りのことは何一つ覚えていない。誰かに聞かれてもどんな山だったか説明できない。そんな山登りに意味はない。

山地図にはコースタイムが書いてあって、とても助かるし、大切なこと。でも、タイムが書いてあると、つい時計を意識し過ぎてしまう。何時間かかったのか、速く歩けるようになったのか。

百名山も同じだ。100個あるうちのいくつかを登ると、つい残りの全部を埋めたくなる。

もしかしたら、自分が今まで好んで山に登らなかった理由のひとつはこれかもしれない。

 

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スピードを落とした。すると、森の風景が変わった。

それに、抜かれることが多くなった理由は、身近な低山と違い百名山になって登山者のレベルが上がったせいもあるかもしれなかった。そういえば、若い人も多い気もする。いいじゃないか、抜かれたって、オッサンなんだから。若い時はムキになったほうがそれらしくていいけど、ムキになったオッサンもそれはそれで好きだけど、焦ると疲労する。疲れると足が上がらなくなり、石に躓く。


歩みを止めた。斜面を見ると、長年放置された倒木が至る所にあった。それを覆うように苔が生え、倒木からは初々しい若木が伸びて輝いている。カメラを取り出した。コケに覆われた森を撮る。

 

いつの間にか風がやんでいた。さっきまで常に騒がしいと思っていたが、あれは自分の足音と背中で揺れるバックパックの音だったと写真を撮りながら思った。いまは、耳を澄ましても人の声も全く聞こえない。

 

10分ほど夢中で写真を撮っていたが、雨が来る前の空白だったみたいだ。

降水確率が0%だったのに、突然ポツポツと雨が降り出した。買ったばかりのシェルを取り出した。今度ばかりは、急ごうか。歩きだすとすぐに蒸れてきた。最新のゴアテックスでも蒸れるのだとわかった。

 

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自分は先日の大菩薩峠と金峰山での尾根歩きで異常に感動していた。でも瑞牆山は視界が悪く、鎖場ばかりでつまらなかった。自分の好きな山、そして登り方。自分らしい旅をする。そんなことを考えた。

そしてもう一つ、車の中で気付いたことがあった。

そうか。山ガール達はみんなドローンだってわかってたのか。

(2017年6月11日)

 

山と高原地図 金峰山・甲武信 (山と高原地図 27)

山と高原地図 金峰山・甲武信 (山と高原地図 27)