天幕ほしぞら

登山、カヤック、釣りの初心者がいろいろと模索するブログ。

冒険っぽくなってしまった登山 青梅丘陵【地図読み登山】

地図読み登山ふたたび

青梅丘陵のメインルートは、多くの人が歩いていた。

都心からアクセスが良く、電車を降りたら目の前が山だ。気軽に森林浴ができるのが人気の理由だろう。登山者はもとより、多くのトレイルランナーやノルディックウォーキングのグループなどともすれ違い、絶えず人の声がしていた。

 

しかし、一歩マイナールートに入ると、誰とも会わなくなり、人の声も嘘のように消えた。

 

聞こえるのは、落ち葉を踏みしめる自分の足音だけ。

胸の鼓動がドキドキとした。

ときおり、名も知らない鳥の鳴き声が山に響く。その鳴き声が、余計に自分は独りだという気持ちにさせた。

 

しかし、それが“過ぎる”のもいけない。

2度目の地図読み登山は、反省も多い冒険チックな登山になってしまった。

 

地図読みに適したルートとは?

地図読みに適したルートとはどんなところだろうか。

『地図読み はじめの一歩』では、以下のような場所が良いと薦めている。

 

「地図読みトレーニングの目的は地図と地形の照合を数多く行なうことです。そのためには地形がすぐに変化する小ぢんまりとしたルートのほうがよいのです。」

「また、ルート全体の構成は、沢沿いの道を登り、稜線を歩き、尾根を下るというものが優れています。」

「沢は上流に向けて分岐するのですから、沢沿いの道を下りに取ってしまうと、分岐点で何も考えずに下っても、正しいルートに導かれてしまうからです。尾根を下りに取る意味はもうおわかりですね。」

 

青梅丘陵は、標高は400m前後だが、小ピークがとても多い。

2度目の地図読み登山も、条件に恵まれた青梅丘陵で行うことにした。

 

ルートが見つからない

石神前駅に降りたぼくは、沢沿いの林道を歩き出した。

途中から、登山道へと入る。前回と同じで、実際の地形と地図の照合が上手くいかず、距離感がうまくつかめない。登山アプリ『YAMAP』 のGPSで現在地を確認して、地形と地図とを照らし合わせる。

 

しばらく歩くと、西へ急登するポイントに来た。

しかし、そのルートが見つからなかった。何度もGPSで確認するも、踏み跡が一切ないし、斜面が急すぎて正しいルートとは思えない。またもやGPSのログには、グチャグチャになった軌跡が残された。

 

ぼくは、地形図に記されたルートと同じあたりを登ることに決めた。ここで間違いないと決めると、かすかに踏み跡のようにも見える。そこからが、悲惨だった。

 

少し進むと一気に高度が上がった。道は無くなり、靴がズルズルとすべる斜面になった。本当にここを登っていいのか。引き返すべきではないか。よじ登っては、GPSで現在地と進んだ距離とを比較する。地図では1mmも進んでいないが、現実はかなり登っていて、降りるのも困難になりつつあった。もう少し登れば、踏み跡があるのではないか。木や低木のツルや草や地面の土を掴みながら這い上がる。立ち止まって見上げると、まだもう少し登れる。しかし、下を見るともう後戻りできないほど急な斜面になっていた。もう少し、もう少しだけ……。

 

草を掴みながら、嫌な記憶を思い出していた。群馬の山奥で野宿したときのことだ。

夜の探検の帰り、川沿いの斜面を3人で進んでいた。3人はもとのキャンプに帰ろうとしていたが、自分たちがいつの間にか急な斜面を登っていることに気付いた。焦ってきたぼくらは、次第に距離が離れた。目の前の木を掴み、靴を滑らせながらヘッドライトを付けた先行者を追う。後ろの二人はヘッドライトの装備がなく月明かりを頼りに手を探った。誰も何もしゃべらなかった。お互いを確認する余裕もなくなっていた。

崖に阻まれるたびに、上へと回避した。その度に、掴むものがなくなり、所々に生える草を掴むしかなかった。土はサラサラとしていて、草は引っ張ったら抜けてしまいそうだった。いくつもの草を束ねて握った。ぼくは夢中で進みながら、誰か死ぬなと思った。

無事にテントに帰りついたとき、誰もが安堵していたが、笑顔はなかった。お互いがそれぞれ「誰か死んだな」と思ったのだ。

 

「あのときと同じになってしまった」

ぼくは杉の木にしがみついた。息が切れていた。深呼吸して回りを見渡す。

もう沢は完全に見えなくなった。尾根の上も見えない。

ハーハー、ハーハー、ハーハー……。

木にしがみついて、遠くの尾根道を歩く登山者を思った。安全な登山道を笑顔で歩く家族連れがいる一方で、いい年したオッサンが斜面にしがみついてハーハーと息を切らしている。

 

しかも、こんな小さな山で、

……冒険をしている。

 

そんな状況に笑えてきた。

 

そして同時に、突然目の前が明るくなった気がした。

そういえば、オレは小さい頃からずっとこんな冒険がしたかったのだ。今回は無謀だったかもしれないが、登り方によってはこんな小さな山でも冒険はできるのかもしれない。

今度は嬉しくて笑えてきた。

 

「まだまだ全然行ける。」

力が湯水のように湧いてきた。

 

木の間隔が狭まり、傾斜が穏やかになった。

そして、見つけた。あった、踏み跡だ。

どうしてこのしっかりした踏み跡が見つけられなかったのか疑問に思った。

この道は下の沢まで続いているのだろうか。それとも、途中で途切れているのか。確認することはしなかった。

踏み跡をジグザグに歩くと、すぐに尾根に出た。

なんと、そこは先日カモシカと遭遇したまさにその場所だった。

 

2度目の地図読み登山を振り返って

山には、メインルートとマイナールートがある。

地形図に載っていても、実際には荒れていたり、消失しているルートもある。

逆に、地形図にはないルートがあって、それを本来のルート勘違いすることもある。

 

そして、登り方によってはこんな小さな山でも面白くなる。

遠く未開の地へ行かなくても、「自分なりの冒険」はできると思ったのも嬉しい発見だった。

(3月23日)