天幕ほしぞら

登山、カヤック、釣りの初心者がいろいろと模索するブログ。

人付き合いで「失敗」する日々

以前、カヤックを漕いで、途中でキャンプをしながら数日間の旅をするというツアーに参加したことがあった。

 

ぼくは、そういう風に長距離を旅することが好きだから、人付き合いは苦手でもいつかは参加したいと思っていた。

それに、旅好きな人たちとなら、話が合うのではないかという期待もあった。これまでの旅の経験や愛用しているアウトドア道具のことを話したいと思った。

 

ぼくは、そのツアーを楽しみに待った。その日のために、新しい道具をそろえた。

しかし、恐れていた通り、初日からひとりだけ浮いてしまった。

 

4人は昔からの知り合いで仲間内の話をずっとしている。あとの2人はうまく仲間入りしていき、ぼくだけが一言も発することができないという構図になった。

これでは、いつもと同じになってしまうと奮起し、連れのグループ以外の2人と一緒になったときに、思いきって自分が話したいことを話した。いままでどんな旅をしてきたのか。どんな経験をしたのか。しかし、反応は薄く盛り上げることはできなかった。

 

旅が終わろうとする夜、いつものようにたき火を囲んで輪になっていた。

「飲んで失敗した体験を話そう」とリーダー格の男が提案した。

おそらく、ぼくひとりだけが押し黙っていたから気を遣って話す場を作ろうとしてくれたのだろう。しかし、ぼくは「最悪の展開だ」と思った。これは完全に飲み会のノリだ。ぼくが一番最後に話すことになったから、やはり気を遣っているのだと思った。

 

皆がひとりずつ話して笑い声が響くなか、ぼくは過去の失敗談を必死に考えた。

そして、最後に自分の番が回ってきた。

「すみません。ないです」

ぼくは、謝った。「本当にないんです」

 

ぼくが10年以上飲みに行くことすらないことは誰も知らない。人前では頭が真っ白になって、言葉が思い浮かばなくなることを告白しても盛り下がるだけだった。

実際に、飲み会で失敗した体験なんか本当になかったし、飲み会では「誰とも話せなかった」という苦い思い出しかない。

飲み会の失敗談がないなら、ほかに失敗した経験がないかとも考えた。でも、ぼくは失敗することがない。なぜなら、失敗が怖くてチャレンジしたことがないからだ。

失敗なのは、「話せない」ことだ。話せない自分だ。

 

リーダー格が「え~ないの」「なんかあるでしょ~」と声を張り上げた。

皆がうつむいたり、燃える木に目を向けているのが焚火越しに見えた。「こういうときは話さなきゃダメでしょ」という責めが声に交じった。

その日までは、気を遣って話しかけてくれたこともあった。しかし、次の日からは完全に自分の存在はなくなった。

 

せっかく旅に出ても、自分の記憶にも、他人の記憶のなかにも、苦い思いを残してしまう。

人生の貴重な体験となるはずだった旅を最悪の思い出に変えてしまう。

毎日、毎日、ふとしたときに、あとときの「失敗」を思い出す。